まえがき
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の役割の違いについて詳細は省きますが、ざっくり言うと不溶性食物繊維は便を大きくして排便を促し、水溶性食物繊維は便を柔らかくしたり腸内の善玉菌のエサになります。
つまり食事で摂取する食物繊維の中の水溶性食物繊維(以下「水溶性」)が足りなくなると腸内環境が悪化し、便秘になりやすくなります。逆に不溶性食物繊維(以下「不溶性」)が足りないと下痢気味になったり、排便回数が減ってどちらも健康に悪影響を及ぼします。
2:1の道は遠い
そんなどっちも大切な不溶性と水溶性の摂取量の割合は不溶性2:水溶性1が理想的とされています。不溶性が水溶性の2倍になる感じで毎日の献立を組み立てられると最良ということですね。
ですが今回のお話のメインはここで、実は『ほとんどの食材の食物繊維は圧倒的に不溶性が多いため、2:1にするのはほぼ無理』なのです。

例えば便秘対策のために野菜をたくさん食べている方は多くいらっしゃるでしょう。しかしニンジンやピーマン、ほうれん草の不溶性は水溶性の3倍、キャベツやブロッコリーは3.5倍、レタスに至っては10倍と、食べれば食べるほど2倍差から遠ざかっていく野菜が多くあります。前述の通り不溶性過多になると便秘になる可能性があるため、「食物繊維をたくさん摂っているはずなのに便秘を推進している」という状況に陥ることも。
他のポピュラーな食材の倍率も見てみましょう。さつまいもやわかめやめかぶ3.5倍、もずく7.5倍、えのきやしめじ9倍、小豆や大豆10倍前後、こんにゃく20倍。水溶性食物繊維の多さで有名な食材のほとんどが、『でもそれ以上に不溶性も多い』ということです。
水溶性食物繊維を不溶性と比較して適切な量摂取するのがいかに難しいかおわかりいただけたでしょう。
ならどうするか。
しっかりとした量の水溶性を摂取しようとすると、とんでもない量の不溶性を摂取してしまっている。この問題を解決して理想的な腸内環境を目指すには2つの方法があります。
水溶性のヒーローを探す
1つめの方法は、水溶性を不溶性よりも多く含む神の食材を日常的に食べることです。ほぼ100%に近い食材が水溶性よりも不溶性を多く持っているため、そんな神の食材は限りなく限定的です。
では神の食材とはなんなのか。
答えは『らっきょう』です。比率はなんと逆9倍。比率だけではなく食物繊維の量も多く、食材の中で圧倒的ダントツNo.1の水溶性キングです。

食物繊維の総量は微々たるものですが、食べやすさを考慮すると『豆腐』もありでしょう。比率は逆2.5倍。
他の逆転比率食材はにんにく(逆2倍)、大麦(逆2倍)、エシャロット(逆4倍)。なんと逆転比率食材はこれくらいしかなく、いかに摂取が難しいかを実感することとなります。
比率逆転とはいかないまでも、差を3倍未満に抑えている食材なら少しはあります。こちらの食材を意識して摂取するのもいいでしょう。ごぼう、ライ麦パン、オートミール、納豆、がんもどき、オクラ、さといもetc
注意点
水溶性食物繊維は、その名前の通り水に溶けだします。例えばブロッコリーを茹でるとその茹でた熱湯に元から少ない水溶性は溶けだしてしまい、不溶性しかほとんど含んでいない状態になります。神の食材であるらっきょうも、酢漬けであれば酢の中に食物繊維が溶け込んでいます。食べるときは漬けてある酢も一緒に飲むといいでしょう。様々な食材から水溶性を摂取するには、スープにするなどして溶けだした食物繊維も残さずいただくのが大切です。
あと、らっきょうは食べすぎ注意です。1日数粒までにしましょう。
食材以外で補う
もう1つの策は、水溶性食物繊維そのものを摂取してしまうというものです。一般的に粉末状のものが出回っており、飲み物に溶かしたり、食事にふりかけたりして摂取します。ほぼ無味無臭なので抵抗なく取り入れられる点や、食事内容に悩まず水溶性を摂取できる点で優れています。
これまでひとくくりに水溶性としてきましたが、実は水溶性食物繊維にもいくつか種類があります。その中で粉末状の製品として流通しているのは難消化性デキストリンとイヌリンの2種類。難消化性デキストリンは半分ほどが善玉菌のエサになる人口加工物であるのに対し、イヌリンはそのすべてが善玉菌のエサとなる天然物です。難消化性デキストリンを使用した商品が多いですが、できるだけイヌリンを選ぶようにしましょう。
イヌリン系の商品を紹介しておきます。
まとめ
知識なく『食物繊維っぽいもの』を摂取し続けていると便秘や不健康を促進してしまう可能性があるとおわかりいただけたでしょうか。より良い便ライフを目指して、水溶性食物繊維を上手に取り入れてくださいね。
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